オイラー角の時間変化
オイラー角の続きです。
対称軸のある剛体の自由回転(その3 やり直しの続き)では、角運動量
と角速度
が、回転する剛体からはどう動いて見えるか、を調べましたが、今回は、この結果とオイラー角の時間変化との関係を考えます。
自由回転では角運動量
が保存されるので、以下では、空間座標のz軸を
の方向を向くように定めることにします。
やり直しの続きで書いたように、対称軸と
との傾きは一定なので、こうやってz軸を定めれば、対称軸とz軸との傾き、つまり
も一定になります。
残った回転の自由度は、対称軸がz軸回りを回転する自由度
と、剛体が対称軸の回りを回転する自由度
です。前者は
歳差運動と言われています(体操に当てはめると宙返り)。歳差運動という言葉は、今回のように、保存されている角運動量の回りを対称軸が回る、という意味以外に、軸の先端を固定したコマの運動のように、角運動量の方向が回ると言う意味に使われることもあります。
もし、
の方が一定(剛体が対称軸回りを回転してない)で歳差運動だけしかしていないとすると、次の図のように剛体に固定された各軸に対する、角運動量
の成分が常に同じ、つまり、
ということになります。
しかし、実際には前に見たとおり、角速度と角運動量のズレ
によって、剛体からは下側の図のように
が変化して見えています(剛体に固定された軸の向きに注意)。従って、この変化は、剛体が対称軸の回りを回転していることだけによっていることが分かります。対称軸と角速度と角運動量の方向関係は常に変わらず、角速度、角運動量は大きさも一定なので、剛体は対称軸の回りを一定の角速度で回っています。
さらに、
の向きを考えると、細長い剛体(
)では
、平たい剛体(
)では
で対称軸の回りを回っていることも分かります。
剛体全体の各瞬間の角速度は、対称軸の回りの回転の角速度と対称軸自体が回転する角速度をベクトルとして合成したものです:
ここで、
は、それぞれ、対称軸とz軸方向の単位ベクトルです。
対称軸自体が回転する角速度
に関しては大雑把な説明になりますが、細長い剛体(
)では、
が小さいために対称軸回りの回転と対称軸の回転が協力しあって
を作るのに対し、平たい剛体(
)では、対称軸の回転による角運動量だけで、
より大きくなってしまい、それを対称軸を逆回りすることによって打ち消して
が作られていると考えることができます。
剛体の角運動量とオイラー角に続く