対称軸のある剛体の自由回転(その1)
角運動量保存則と回転のエネルギーの続きです。ここからは、コマや円柱のような対称軸のある剛体の自由回転(外力なし)に単純化します。コマと書きましたが、自由回転なので、地面に置くのではなく宇宙空間の中の運動です。
実際に色々とパラメーターを変えながら動かして遊べるシミュレーターを作りました:
円柱の回転運動。
対称軸のある剛体の回転運動を本やネットで調べると、どれも、オイラー方程式を解いて、「剛体座標系から見た場合に、角速度が対称軸の回りを大きさを変えずに一定の周期で回る」、という解を導いて終り、となってしまっていて、それが実際に外から見るとどういう運動なのかがよく分かりません。対称軸のない一般の剛体の場合には、オイラー角を使ったオイラー・ラグランジュ方程式を解いて、もっと難しい結論まで出てはいるのですが、私にはもっと分かりません。
そこで、ここでは対称軸のある剛体の自由回転が、剛体座標系ではなく、外の慣性系からみるとどういう運動なのかを考えていきたいと思います。今回は、方程式を解く前に分かる内容についてです。
以下では、空間座標系(任意の慣性系)の直交座標軸を
、剛体座標系(剛体に固定されて剛体と一緒に回る座標系)での直交座標軸を
と書いて区別します。剛体座標系の原点は、剛体の質量中心に置き、
軸は、剛体の対称軸方向、
軸は、
に垂直に適当に決めるものとします。このように定めると、
軸回りの慣性モーメントを
としたとき、
となり、剛体座標系から見た慣性テンソル
は、
となります。対称軸回りの半径が0の細長い極限では、
で、逆に、厚みの無い極限では、垂直軸の定理
が成り立つので、今の場合には
です。厚みが出てくると
が大きくなるので、対称軸のある場合の慣性モーメントには、一般に、
という性質があります。
回転の様子は、
のどちらが大きいかで、大きく変わります。
角運動量保存則と回転のエネルギーの理屈に従い、
(細い棒)では、同じ角運動量で回るなら、対称軸自体が角運動量の方向に対して垂直に回る(動画その1右端)のが一番エネルギーが低く、対称軸と角運動量の方向を向いて回る(動画その1左端)のが一番エネルギーが高くなります。逆に、
(平たい円盤)の場合には、対称軸が角運動量の方向を向いて回る(動画その2左端)のが一番エネルギーが低く、対称軸が角運動量に対して垂直に回る(動画その2右端)のが一番エネルギーが高くなります。
対称軸のある剛体の自由回転(その2)に続く