月の傾きと緯度の関係では、夕方に沈む三日月は、緯度の高い地域ほど立って見える理由を大雑把に説明しました。今回は、同じ場所で三日月を見ても、季節によって傾き方が違う理由を
月の満ち欠けと緯度を使って説明していこうと思います。
日本で夕方沈む三日月は、
- 春分に近い時に一番寝る
- 秋分に近い時に一番立つ
- 夏至と冬至に近い時に、春分と秋分の時の中間ぐらいに傾く
という性質があります。赤道近くでは、春分に近い時は寝過ぎて反対の左下が光ります。
地球は太陽の回りを公転し、月は地球の回りを公転していますが、地球に乗った我々から見ると、太陽も月も地球の回りを回っているように見えます。この時の地球から見た天球
(*1)上の太陽の通り道を黄道、月の通り道を白道といいます。太陽は常に黄道の上に乗っていて、一年かけて黄道を一周し、月は常に白道の上に乗っていて、一ヶ月ぐらいかけて白道を一周します。
黄道と白道は異なりますが、なぜかたまたま白道は黄道に対して5.1度しか傾いていないので、実質、ほとんど違いはありません(
黄道と白道の左側の図の黄色い実線が黄道、白い破線が白道です。また右側の図では外側の円が黄道、内側の円が白道です)。このため、いつも月は黄道の近くにいます(但し、もし完全に黄道と白道が一致していると、毎月、新月のたびに日蝕が起こり、満月のたびに月蝕が起こってしまうので、少しだけずれている事が分かります)。
さて、
春分の日の夕方を考えます。太陽は、地球の外から見て、下の図のような方向にあります。その三ヶ月後の夏至の頃には、地球が同じ方向を向いているとき(正午)、薄い色で示した方向に移っているはずです。
これを地表から考えてみると、下の図になります。春分の日には夕方、太陽は真西に沈みますが、夏至の頃には、太陽は天球上の薄い色で示した方向(南の天頂近く)にきているはずです。従って、太陽が通る道、黄道は真西から鉛直に近い角度で立ち上がって天頂近くに届いていることが分かります。
一方、始めに書いたように、月はいつでも黄道の側にいます。春分頃の夕方の三日月なら、上の図のような位置にあるはずです。太陽が真下に近い方向(の遙か彼方)から月を照らしているために、月が寝て見えることになります。
同じように、
秋分の日の夕方、三ヶ月後に地球が同じ向きを向いている時の太陽の位置を考えると、南の低い位置にきているはずです。つまり、黄道は、真西から低い角度で南に向かいます。このため、秋分前後には、黄道の近くから離れられない三日月は、太陽に横の奥の方から照らされ、立って見えることになります。
夏至の日の夕方と、
冬至の日の夕方には、太陽はそれぞれ、これ以上北に行けない限界と、これ以上南に行けない限界に来ています。そのため、前後しばらくの間、太陽は天球上の位置をあまり変えません。このことは、太陽が地平線に沈んでいく時の道筋と黄道が重なっていることを意味します。そのために、三日月の傾き方は、春分頃の傾き方と秋分頃の傾き方の間ぐらいになるのです。
最後、説明がややこしくなって、はしょってしまいました。アプリの方で色々動かしてみて考えてみて下さい。
*1 天球とは、恒星が貼りついた空の球です。地球が自転する代わりに、天球が地球の回りを天の北極を中心にして一日に一周回る、という考え方をします。太陽や月も天球に貼りついて回りますが、恒星とは異なって、毎日ゆっくりと天球の上を移動しています。太陽の動く天球上の道が黄道、月の動く道が白道です。黄道の方は、天球上で定められた道ですが、白道の方は18.6年周期で動いています。
月の満ち欠けと緯度で、
昇交点の位置を変えてみると、白道の動きを見ることができます。