対称軸のある剛体の自由回転(その2)
対称軸のある剛体の自由回転(その1)の続きです。
前回の後半で、剛体の対称軸が角運動量の方向を向いているときと、垂直になっているときの二つの特別な場合を取り上げましたが、一般の回転では、対称軸と角運動量の方向は斜めに傾いていて、回転軸は刻一刻変わります。回転の速さも変わるかも知れません(運動方程式を解くと一定であると分かります)。以下では、各瞬間の回転軸の方向と回転の速さを合わせて、角速度
と書くことにします。これは一般に時間依存するベクトルです。これに対して、角運動量
は、自由回転を考えているので、角運動量保存則により一定です。
対称軸と角運動量との方向のズレにより、角運動量と角速度の方向のズレが以下のように決まります。
前回同様、剛体座標系での直交座標軸を
とし、
を対称軸方向、その回りの慣性モーメントを
、残りの二つの軸回りの慣性モーメントを
とすると、剛体座標系で見たときには慣性テンソルが対角化されるので、角速度と角運動量の成分の間には、
の関係があります。
なので、
の対称軸に垂直な面への射影
は同じ方向を向きます。そして、
の場合は、次の図のように対称軸と角運動量の方向の間に角速度が挟まれます。
角運動量が同じで、各運動量と対称軸の間の角度も同じ、角速度の大きさも同じ場合、
が小さくなる程、
の対称軸方向の成分
は大きくならないといけないので、
は対称軸の方に寄って行きます。また、
の場合には、次の図のように対称軸と角運動量の方向の外側に角速度が出る形になります。
の最小値は、厚みの無い極限で
(垂直軸の定理)なので、
が対称軸に垂直になるまで傾くことはありません。最後に、図は省略しますが
のときだけ、対称軸の傾きに関係なく、角運動量と角速度は同じ方向を向くことも分かります。
この角運動量と角速度の方向のズレが、次回見るように剛体の回転に関わってきます。
対称軸のある剛体の自由回転(その3 やり直し)に続く